住宅ローン利用者の約7割が「変動金利」を選択しています。(2022年4月 住宅金融支援機構の民間住宅ローン利用者 実態調査より)
しかし、その半数以上が「変動金利」のことをよく知らないで選択しています。
わたしも、「金利が安いから」と安易に変動金利を選択した一人です。
この記事では、「変動金利」の「仕組み」と「リスク」を解説しています。
- 「変動金利」と「固定金利」の違い
- 「5年ルール」と「125%ルール」について
- 「5年ルール」と「125%ルール」で増大するリスクとは?
この記事は、現役の公認会計士であり、「住宅ローンの仕組み」「選び方」「資金計画」「返し方」を解説している人気ブロガーの千日太郎さんの著書を参考にしています。
『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』千日太郎(2020年/日本実業出版社)
「変動金利」と「固定金利」の差は、金利変動に対する保険の有無
「変動金利」と「固定金利」の金利差は、「金利変動リスクの保険が備わっているか」です。
- 金利変動リスクの保険が備わってない住宅ローン
(金利変動リスクは自分が負う)
- 金利変動リスクの保険料が備わった住宅ローン
(金利変動リスクは契約している銀行が負う)
これが「変動金利」と「固定金利」の差です。
つまり、住宅ローンを選ぶ際は、金利が「高い」or「安い」だけでなく、「金利変動リスクに対する保険料が自分にとって、安いか高いか」を考える必要があるのです。
もっと詳細に書くならば、
- 金利変動リスクを理解しており、(金利が上昇しても)自分でそのリスクを許容できる人
- 金利が上昇しても、計画通りに住宅ローンを返済できる人
(=金利上昇しても返済できるキャッシュ(現金)がある人)
上記2点が「×」の人は、「固定金利」を選ぶのが無難です。
「金利が低いから」だけで「変動金利」を選ぶと、金利が上昇時に返済が困難になります。
最悪、住宅を売却しなければいけないというリスクは考えるべきなのです。
金利上昇でも「5年ルール」と「125%ルール」で、返済額は無制限に上がらない
では、「変動金利」で金利上昇した場合、すぐに返済が困難になるのでしょうか?
そうではありません。「元利均等返済方式」を選択した場合、どんなに金利上昇しても、毎月の返済額はすぐには上がりません。(【注意!】「元金均等返済方式」選択の場合は適応外のため、すぐ上がります。)
なぜなら下記の2つルールがあるためです。
- 「5年間」は最初に決めた返済額は変わらない
- 「5年経過後」は5年毎に「変更直前の返済額×125%」を上限で支払い
但し、これで金利上昇の影響を受けないと安心していけません。
これは「金利上昇の影響を後ろに回しただけ」なのです。つまり、毎月の返済額において、利息分が多くなっただけで、元金分の返済が少なくなります。
これは、「当初の予定通り元金が減らない」ということを意味しています。結果、元本の減りが鈍化するため、最後に完済できなくなるというリスクが出現します。
変動金利上昇で住宅ローンが完済できないリスクの対処法
変動金利上昇した場合、住宅ローンの借り手である私たちが、安い金利を維持することは不可能です。
(当たり前のことですが…。)
変動金利上昇で住宅ローンを完済できないリスクに対して、私たちができる対処法は、ただ1つ。
「繰り上げ返済」することで、利息の負担を減らすことです。
これしか対処法はありません。
そのため、予定年数で住宅ローンを返済終了するために、「変動金利が○◯%上がった場合、▲▲円繰り上げ返済」と可視化しておく必要があるのです。
「金利が上昇した場合の繰上げ金額を可視化した金額」を見て、ストレスを感じる度合いが自分にとっての「本当の変動金利のリスクの大きさ」です。
この様に「変動金利」を理解し、金利上昇のリスクを許容できて、初めて「変動金利」の選択するスタート地点に立てるのです。
まとめ
金利が「固定金利」より安いからといって、安易に「変動金利」を選択するのは非常に危険です。(将来の金利動向を的中させることは誰にもできません。)
金利が上昇した場合、住宅ローンを完済できないリスクが発生します。
繰上げ返済や貯金で、そのリスクに対応可能かをよく考えた上で住宅ローンを選びましょう。(そもそも金利上昇のリスクを取りたくないという人は、「固定金利」を選択しましょう)
今回は「「変動金利」を選択する際に、事前に知っておくべきこと」を紹介しました。
次は「変動金利」「固定金利」を選ぶ前の「住宅ローンの資金計画」について、考えてみましょう。
下記の「あせて読みたい」では、「資金計画で事前に知っておくべき3つの考え方」を紹介しています。是非、一読ください。
また「ピックアップ」では人生の永遠のテーマ「「持ち家」「賃貸」どっちがお得?メリットとデメリット」を解説しています
参考文献⏬の本を読むことで、さらに理解を深めることができます。